阿波谷先生へ。

「コメ!?別になくてもいいだろ。てかホットドックの方がおいしいし」
最近まで↑のような、海原雄山が聞くと嘲笑われて料理で無理やり改心されかねない考えの持ち主だった僕。


でも僕は最近分かったよ
日本人はコメが絶対恋しくなる生き物なんだってね。




今日だって、朝昼はどでかいフランスパンで何とか腹を満たしたけど、そうなると今度は晩は無性に白ごはんが食べたくなっちゃってさ。
寮食堂も日曜日だから開いてないし、かといって冷蔵庫の中には、サバの味噌煮缶とヨーグルトとハチミツとマーマレードと日本酒しかないし…。



ゴクリ…飯が食いたい…
すわ!食糧調達にSANWAに出陣じゃ! と、こうなるわけで。
(SANWAとはみなみ野市民の台所とまでいわれる、いわゆる普通のスーパーである)





ベットにシッカリと根付いている体に鞭打ち、部屋のカードキーを15分も探すというアクシデントもありながらも、久しぶりに米を食べれる興奮が隠しきれずドキドキしながらSANWAに向かう俺。久しぶりと言っても半日ぶりだけど。
外にはえらく学生が行き来しているな、そうか今日はウチの大学の学園祭だったな。




ものの5分でスーパーに到着して、改めてご飯を探してみた。今どきのスーパーって【炊きあがった米】ってのはあまり売ってないんだね、全部レトルトだし。
迷いに迷って売り場にたどりついてみると、あるわあるわ米のレトルト商品の山!山!山!。まさに宝石箱じゃないか。
そして玄米やら五穀米やら大盛りやら赤飯やら色々あった内から、僕は【つややかなごはん】を買うことにしました。


この商品名の歯切れの悪さが気に入ったんだよね、【つややかごはん】ならもっと歯切れのいい【パパっとライス】を僕は選んでいただろう。







ようやく食べれる米に僕は小躍りしながら、寮へと小走りで帰り、さっそくレンジでチンをしたよ
今の僕にとっては1講義分にも感じる2分間がようやく経ち、パックの隙間から立ち上る湯気を鼻から吸い込もうと鼻を近づける。



知ってるぜ海原、日本のコメは香りから楽しむんだよな。




んすぅ〜〜(吸ってる)
その瞬間僕の中は、まさしく日本人の心を揺さぶる香りに包まれる……ハズだった。


あれ、なんだこの匂い……




ウソだ、なんだか阿波谷の匂いがする (ショックだった)
教えよう、阿波谷先生とは高校の時にいた先生で、お節介と良い先生の狭間に位置し加齢臭がちょっとする、誠実さがウリの教師である
なんでレトルトご飯の中からオジサンの匂いがするのか不思議。





どーせその後気持ち悪くて食べれなかったんだろ。 だって?


いやいや、懐かしさに涙を浮かべながら美味しく頂きましたよ。
におい消しの為にサバの味噌煮を少しかけましたがね。







ごちそうさま、元担任の阿波谷先生。
あなたはいつまでも 僕の心の中に居座っていますよ。










明日は友達が学園祭で喫茶店を出すというので、僕もお手伝いで行ってきます。
もしかしたらお礼でお金がもらえるんじゃないかとスンスンしているのは皆にはヒミツ。




私 「ぼく料理とか苦手だから、出来るだけ接客とかの方がいいな」


彼 「わかったよ、参考にしとく」




結果、見事に料理係にさせられていたという。妙にプレッシャーかかるじゃねえかおい。







今からツメを切って来よう。